ブライダルジュエリーの営業を3時間受けました 後編
これまでの経緯は前編をお読みください。
色々あって彼女もいない童貞がブライダルジュエリーのお店へ。
今日はありがとーと長野さんが声をかけてくれたが内心は完全に萎えていた。*1
テーブルに着いて長野さんを待っているうちに
半年ほどキャバクラに通っていた記憶がフラッシュバックしてきて死にたくなった。*2
20分ほど雑談やらダイヤのや結婚費用の話やらしていると
「原さんっていうすっごい詳しい先輩がいるからその人も同席していい?」
とおっしゃってきた。
正直ここまではまだワンチャンお金の話をせずに女性と雑談だけして帰れるのではという
淡い期待もしていたがその期待も見事に打ち砕かれた。
ただでさえ路上というセントラルな場所から相手のホームに出向いているのに
人数比が1:1でなくなったら流石に甘ったれた考えは持てない。
相手方としてはあとは数と同調圧力で攻めればいいだけである。
そうはいっても原さん(50前後のおっさん)も交えて話を始めたうちは
まだ何か買うような話は出てなかったのでダイヤの蘊蓄を聞きながら
適当に相槌を打っていた。
「ダイヤの輝きと価値はこれからも一生変わらないんやで」
「そうなんですね~(6時までには帰りたいな)」
そうこうしてるうちにネックレス試着してみる話になり
どれが一番気に入ったかときかれてこれとかいいですね~ってなったら
何故かそのネックレスが机に置かれる。
「有名なところだと結婚指輪って120万とかするけどこれ何円だと思う?」
「同じくらいするんじゃないですか?」
「なんとその半分の60万なんだよ!」
典型的なドア・イン・ザ・フェイス*3です。本当にありがとうございました。
そのあとに分割だとこれくらいとか多少の説明を受けたが
「すいません。今日は話聞くだけだと決めてたので…」
「いや絶対後悔するよ。君みたいな子は買ってから一念発起してかなり成功してるから!」
俺は今まで基本的に親や教師や他人と合わせることを優先して生きていた。
そんな生き方はダメだと思いなおし少しずつ自分主体で物事を考えるようになってきた。
そんな折に「みんなやってるから」というノリで来られたら
それこそ断る以外の選択ができないのである。
その後は原さんの説得のような説教のような言葉を受けて
1時間近く経ってからようやく解放された。
知識はあっても行動しないと変わらないよと言われたが
ここで俺は「断る」という行動をしているのです。
成功者は商談の場に立ったら99%購入すると決めて来てるよと言われたが
俺は99%断ると決めてここに来たのです。
まだ他人の顔色を伺う癖が抜けないので
ここに書いていることをその場で全て言えなかった。
とにかく相手はベテランなのだから「買わない」ということさえ間違えなければ
それでよかった。
3時過ぎにお店に入り、出た時には6時を超えていた。
長野さんがこのあとおっさんに怒られたりしないだろうかということだけ心残りであった。
最近また寒いな~と思いながら駅へ続く道を歩いた。
それでももうすぐ暖かくなるだろう。